コシミハルのニューアルバム“ペリカン通り殺人事件”リリースにあわせて行われたインタビューをご紹介します。アルバムを聴きながら読むとより一層楽しめるはずです。
指さし新しいアルバムについて教えてください。
以前のアルバムにくらべて「歌曲」という意識が薄い音楽が多く入っています。どちらかというと、映画の音楽を作っているような感覚でレコーディングしていたので、全体を組み立てるような感じで作曲したものが多いです。
指さしインストゥメンタルが多いのでしょうか?
そうですね。気持ちの上では、特に歌うための曲としてメロディーを考えたものは、一曲程度かも知れません。
指さし歌われている曲は何曲ありますか?
6曲ですね。フランス語で作ったものが4曲、日本語が2曲あります。
指さし参加されてるミュージシャンの方々を教えてください。
パーカッションは以前からずっと一緒にやっていただいてる、浜口茂外也さんという素晴らしい音楽家です。今回はほとんどの曲に茂外也さんのパーカションが入っています。アコーディオンは風間文彦さんで、風間さんもいつもレコーディングを一緒にお願いしています。それから、ファゴットの父や、トランペットやフリューゲル・ホーン、サックス、クラリネットなど、今回のレコーディングではいつもより、生楽器を多くレコーディングしているのも特徴かもしれません。細野晴臣さんにはマニュピレーションで、ドラムの音を2曲手伝ってもらいました。リズムに独特の息吹を与えてくれて、素晴らしい音に仕上がりました。
指さしジャズのスタンダードの名曲「ローラ」を取り上げた理由は?
ここ数年、普段はこのような音楽(ジャスのスタンダード)しか聴いてないんです。そのなかでもいつかやってみたいと思っていた曲が「ローラ」だったんです。ただジャズのスタンダードは、オリジナルの作品が完成された形であるだけに、それを再現するには恐れがあって、いままで取り上げられなかったんです。今回ようやく一曲取り上げてみようと言う気持ちになれたので、「ローラ」をとりあげました。これは「ローラ殺人事件」というオット・プレミンジャー監督の40年代の映画のなかの曲です。デヴィットリンチが「ツインピークス」を作るときに参考にしたということが何かに載っていたので、6年くらい前でしょうか、そのころに見てとても美しい映画だなと思っていて。ああいう、ロマンティックでハードボイルドなフィルム・ノワールという、ものすごくドライな部分とロマンティックな部分が共存しているものが好きですね。
指さし"Rodeo de Paris" から始まったウエスタン路線の曲もあるようですが。
「荒野の恋人」は「マイ・ダーリン・クレメンタイン/荒野の決闘」というタイトルがついているヘンリー・フォンダがでている映画があるのですが、あの映画がとても好きで、映画の中に酒場の女の子でチワワという女の子がでて来るんです。、ビクター・マチワ扮するドック・ホリデーと言う人をとても好きなんですが、全然相手にされなくて、そのまま彼女は死んでしまうのですが、そのチワワの気持ちがだぶっているような楽曲です。
指さし他に、ニノ・ロータ風のインストもありましたね。
"ペリカン通り殺人事件" という曲です。これはウェスタン的なコンセプトの曲ですが、そこから今回はフィルムノワール的なものに寄ってきた感じです。
指さしミハルさんにとってウエスタンとはどんなイメージですか?
限りなく青い空というイメージがすごくあって。いつも晴れていますね。ウエスタンの映画のイメージは。映画の中に必ず出てくる酒場のシーンというのがあって、そのなかにはピアノを演奏する人や歌をうたう酒場の女性のシーンがちらっと出るんですが、そういうさりげなく音楽を演奏する部分も含めてとても気に入っています。自分にとってウェスタンは全てが虚構という感じがして、そのなかでの考え方は今では全く通用しないことばかりだと思います。男女の生き方も、そういう側面がお面白いですね。男の人もあんな風に野蛮に生きれないだろうし、女の人もウエスタンのなかで描写されるように一途に生きることは現代の社会では考えられないと思います。いまはもっと複雑にものが入り交じって生活しているし、ピストルでパーンと打って人生は終わりにはならないでしょ。そういうのも含めてお面白いです。ウエスタンは私にとって、ある意味では理想的な世界でもあるんです。
指さしフィルム・ノワール的な世界は?
フィルム・ノワールというのは混沌しているところがあって、日本語にすると正しい定義はないそうですが裏社会の映画のことでしょうか。フランス映画ではジャン・ギャバンの「死刑台のエレベーター」とか、さっきの「ローラ殺人事件」とか「ギルダー」とかアメリカの映画には沢山あります。フィルム・ノワールはとてもロマンティックだと思います。女性も男性も幻想の中に生きてるような所があって。よく人の運命を狂わせてしまう女性が出てくるんです。そのために人生を踏み外してしまうような、ひとつの犯罪にまきこまれてしまうような場合が多くて。またその女性の描かれ方もすごく謎で、「ローラ殺人事件」のローラもすごく謎だった。どんな風に魅力があって、どんな風に人の人生を狂わせて行くかというのがとても曖昧なんです。ただ、美しく描かれている。女性の描かれ方はウェスタンとフィルム・ノワールでは全く違います。ウェスタンでは女性は幻想的ではなく差別されているから、本当に19世紀という感じです。家があって、家を守るか、そうでなければ酒場の女のひとで、男に仕えるか。
指さしそのふたつがミハルさんの中で、どう結びついているのですか?
そのふたつがあればちょうどバランスがいい感じがします。たぶん、両方とも自分の本質には近いものではなくて、やっぱり虚構性が強く感じられるからだと思う。ふたつのなかには美学のようなものを感じます。虚構だけれども理想のイメージというのでしょうか。
指さしレコーディングか終わった後のスケジュールは?
リリースは2月23日ですが、同じ時期にいつものステージをやりますのでそのリハーサルです。ステージの内容は今つくっているCDの内容が中心です。
指さしステージのイメージは?
コンテを描きはじめていますが、まだこれからですね。出演者の編成は前回のステージ「Rodeo de Paris」のときと同じです。バレリーナ3人。ジャズダンサー1人。そしてピアノとファゴット。バレリーナはひとりをのぞいて今回は別の方に変わります。
指さしステージの演出は音楽をつくりながら考えるのですか?
今回に限り考えませんでした。いままではそうでもなかったんですが。今回は恐らく自分の中でとても変化したんだと思います。音楽の作り方が。
(インタビューbyミディアム)