2002年07月07日

2002年の七夕・モンドくんコラム



ワールドスタンダード/鈴木惣一烽フ 実録!モンドくん日記


「趣味を軽く扱うな。趣味は選択であり、その人の生き方につながる」。ハリーの名著『地平線の階段』からスーザン・ソンタグ氏の引用です。ホントその通りで、音楽にまつわることすべてが僕のお仕事であり、全くの趣味。だから毎日がお遊びでお仕事。ですから、たのしくたのしく疲れます。この「モンドくん日記」は基本的に僕が毎日、何を見て、聞いて、買って、読んで、何を感じたか?それだけを記したものです。けれど、その記述だけで僕自身の全人格、生き方がわかります。わかるはずです。すべて実録いやホント。気軽に毎週ウォッチングしてみてください。さあ、今日から貴方もモンドくんウォッチャーだ!。(鈴木惣一朗/worldstandard)

2002年の七夕・モンドくんコラム

2002年の七夕の日。お昼に青山のCAYに着いた。とても暑い夏だ。会場にはまだ誰もいない。楽器をおろし、近くのドトールコーヒーへと歩く。アイスティーとサンドイッチを買って、戻り、食べながら歩く。スパイラルの一階のレコード屋を覗くと、青柳君が天才バカボンのような笑顔でやってきた。「お早う」。彼にすぐ目の前にディスプレイされていたスタンリー・スミスのアルバムを薦める。「ソウイチロウさんがそこまで言うなら買いましょう」と快くお買い上げ。青柳くんは本当にバランスが良い音楽家だ。ぼくは大好き。どんな楽器をアプローチしても、謙虚な演奏をする、彼の歌声もナイーヴで好きだ。今日もそんな彼と一緒にプレイ出来て嬉しい。

会場に降りる。ムースヒルことゴローさんがやってきて機材を搬入している。「おはよう」。今日、ぼくはゴローさんと一緒に行った古着屋のヴィンテージのアロハを着ている。彼がいつも着ているアロハ(バスの絵が入っている)が気に入っていたので、昨日の夜、リハーサルの合間に連れていってもらったのだ。残念ながら同じものはなく、なので、ぼくは渋いフラワーなアロハを買った。たわいもないことかもしれない。けれど、こういうことがいい。音楽を一緒に作る上で、さりげなく大事だと思う。ゴローさんの穏やかな笑顔、ぼくはすでにリラックスしている。さてと、333ディスクス/オーナー兼ドラムのヨーコさんもやってきた。アイリッシュ・ハープのユカちゃんも御到着。「さぁ、リハーサルだ!」。

かつて、ペンギン・カフェ・オーケストラという素敵なネーミングの(故サイモン・ジェフスのグループ)楽団があった。今日のメンバーは皆、ジェフスの大ファン。なので、リハーサルでペンギン・カフェのナンバーを少しジャムる。良いムード。もう少し練習したら本番でも出来そうなのだが、お楽しみは残しておく。PA回りのミキサーの武田さんに挨拶。デイジー周りもいつもやって頂いている方で安心する。竹田さんいわく、17年前、ワールドスタンダードのライヴ(サンディー&サンセッツの前座/東横劇場?)をやったと言う。その時のぼくは「ピアノの音をもっと!もっと!」と興奮して言ってたのが印象的だったらしい。「今日、ぼくは、その17年前もやった曲をひとつ演奏します」。

リハーサルは2時頃に終わり、本番は10時。さぁ、時間をどう潰すか悩み所だ。ライヴ前に飲み過ぎるのも(しかも8時間も?)ダメだし、一度、家に帰ると、お風呂に入って多分寝ちゃうだろう。「みんなで卓球!」というアイデアも出たけど、そんなことしたら、ぼくはもう演奏できない。結局、夕飯まで各自、自由行動となった。表に出ると、とても暑い夏。仕方ないので、こどもの城まで歩く。神宮前この辺は昔からずっと変わらない風景。一階の食堂に吸い込まれるように入り、無意識で「蕎麦寿司定食、それにビール」などと言ってしまう。これが今日の2食目。ホールはガランとして、お客さんは誰もいない。でもウェイターは6人もいて、彼らは、やることがないので、ぼくが他に何かオーダーするかと睨んでいる。無意味に水を取り替え、灰皿なども持ってくる。煙草は吸わないのに。BGM は何故か「ランバダ」。ひぇ! 何だか楽しくなってきた。外に出ると、更に暑い夏。ぼくは渋谷の街まで歩く。

渋谷をブラリと無目的に歩くことは少なくなった。最近は、大抵、打ち合わせか、レコード、服、本を買うためだけに歩く。タワーに行き、ジム・メッシーナのファースト・ソロ『オアシス』のリイシュー盤を見つけ、購入。ぼくが18才の夏によく聴いたものだ。公園通りを下り、指圧屋さんに行き、慢性の腰痛を少し和らげてもらう。でも、まだ時間がある。と、いきなりヨーコさんから電話。「スズキさん急いで帰ってきてください。賄いが出ましたよ!」とシャウトするので「カレーを残しておいて」などと言い、青山CAYに6時に戻る。みんなはすでに食事は終わっていて、ぼくだけモグモグと食べる。係の方? に気を使って頂き、今日、2杯目のビール頂く。更に、みんなで一階のカフェへ行き談笑。ぼく以外は皆、甘いもの好き。紅茶のアイスなどオーダー。ぼくは生ビール。これで今日、3杯目。タミーさん、P-VINE塚本くんもやってきて和む。本番まで、あと3時間。異常な食欲が爆発。スパイラル横の、オーダーすれば、すぐにカレーが出てきそうなお店でカツカレー&サラダ&コーヒーなど食べ、さて会場へと覗く。すでにmama milkが熱演中。知り合いも多く、山本哲也くんもいる。ので、彼を呼び、近所の行きつけのお蕎麦屋さんへ。又してもビール。これで4杯目。肴は板わさと枝豆。本番30分前までそこで飲み、時刻は9時半。やっと楽屋へ。軽くチューニングをしようかなと思ったら「さぁ。楽器をステージにあげましょう」という状態で、かなり緩い状態のまま上がる。酔いは覚めていて、再び少しビールを飲む。これで5杯目。10時。ステージ。始まる。

futari-trioのメンバーは、いつもゆるやかに曲を始める。演奏しているのかどうなのか、気づかれないようにしてるほどに、楚々と始まる。この感じが、ぼくには魅力的だ。空間に音楽が染み入るように流れ込み、最初のうちはお喋りをしていたギャラリーも、曲が進むにつれ、演奏に集中してゆく。場内がしんとしている。「17年前、ぼくが25才のとき、書いた曲です」と紹介し、ワールドスタンダードの「たんぽぽのお酒」を演奏。ノンスタンダード時代、デビュー盤に入れた曲だ。ぼくには想い出が深い曲。ゴローさんや青柳くんと演奏したかったのだ。10日前のはっぴいえんどトリビュート・ライヴ「さよならアメリカさよならニッポン」の演奏で、ぼくは本当に一周したのだろう。今までの歩みに、自然な気持ちで接することが出来る。だから「たんぽぽのお酒」も何の気負いもなく、するすると演奏した。まるで昨日まで、ずっと演奏していたかのように。

ステージは自分たちが予想もしなかった? 熱い盛り上げを見せ、とても充実した気持ちで終えることができた。本当に良いライヴだった。アンコールをたくさん頂いたが、持ち曲はすでになく、軽い挨拶で締めた。終了後、ステージ裏の駐車場で、皆で握手をした。笑顔が囲む握手。futari-trioのライヴは僅か2回で、ひとまず終了なのだ。名残惜しい。だから、皆で秋には必ず、もう一回演ろうと約束した。是非とも、実現して欲しい。全体の打ち上げはなく、残ったメンバーで近所のジョナサンで軽く打ち上げ。ぼくは6杯目のビール。7杯目のビールと8杯目を飲んだ。深夜3時過ぎ、すべての宴はおしまい。心地よい夏の風がぼくを包む。タクシーを拾い、帰路へ。七夕の夜、長い一日が終わった。皆さんありがとうございました。
posted by dwww at 00:00| 実録!モンドくん日記